金型の樹脂成型について

樹脂は軽量で加工性に優れ、金属代替材料としても広く利用されています。家電、自動車、医療、包装資材など、私たちの生活を支える多くの製品は樹脂成形によって生み出されています。
そのため、樹脂成形に用いる金型は「寸法精度・離型性・耐久性」の確保が非常に重要です。特に、樹脂は熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂と種類が多く、それぞれ成形条件が異なるため、金型に求められる性能やコーティング処理も変わってきます。

ここでは、樹脂成形金型の用途、代表的な業界と相性、メリット・デメリット、さらに有効なコーティングについて詳しく解説します。自社製品に最適な金型と処理を選択する参考にしてください。

樹脂成形金型の主な用途

樹脂は用途ごとに多様な加工法があり、金型もそれに応じて最適化されています。

• 射出成形金型：
  もっとも一般的な方法で、熱可塑性樹脂を溶融・射出し複雑形状を高精度で量産可能。家電筐体や自動車内装部品などで利用。
• 圧縮成形金型：
  熱硬化性樹脂やゴムに近い材料を高温圧縮して成形。電気絶縁部材や耐熱部品に使われます。
• ブロー成形金型：
  中空成形によりボトルやタンクを製造。飲料容器や燃料タンクに必須です。
• 押出し成形金型：
  長尺物やシートを連続的に製造。パイプ・フィルム・建材で活躍します。
• 発泡成形金型：
  発泡樹脂を用い、軽量で断熱性に優れる部材を製造。梱包材・住宅建材に応用。

樹脂成形金型が活躍する業界

樹脂は軽量で安価、デザイン自由度が高いため、多種多様な業界で利用されています。

業界	代表的な用途	求められる特性	課題と対策
自動車業界	バンパー、内装部品、燃料タンク	軽量化、耐衝撃性、寸法精度	収縮・反り → PVDコーティングで寸法安定化
家電・電子業界	筐体、絶縁部品、コネクタ	耐熱性、絶縁性、デザイン性	離型不良 → フッ素コーティングで離型性強化
包装資材業界	飲料ボトル、食品容器	軽量性、透明性、衛生性	成形サイクル短縮 → 耐熱コーティングで効率化
医療・精密機器	シリンジ、カテーテル、光学部品	高精度、衛生性、耐薬品性	寸法誤差防止 → 鏡面仕上げ＋薄膜コーティング

樹脂成形金型のメリットとデメリット

【メリット】

• 大量生産が容易：射出成形により、複雑形状を短時間で大量生産可能。
• 軽量化に貢献：金属代替として利用でき、製品重量を大幅に削減。
• 設計自由度が高い：複雑な形状やデザイン性を実現可能。
• 低コストで多様な素材を利用可能：ABS、PC、PE、PPなど用途に応じた選択が可能。
• リサイクル対応：熱可塑性樹脂は再利用がしやすく、環境配慮につながる。

【デメリット】

• 寸法安定性の課題：樹脂は収縮率が高く、反り・変形が発生しやすい。
• 摩耗や腐食のリスク：樹脂中の添加剤やガラス繊維が金型を摩耗させる。
• 離型不良：粘着性の高い樹脂では成形後に型から外れにくい。
• 表面品質の確保が難しい：微細な傷や樹脂の流動痕が表面に残る可能性。
• 初期投資コスト：高精度金型は製作費が高額になる。

樹脂成形金型に適したコーティング例

樹脂成形金型の課題を解決するために、以下のコーティング技術が広く使われています。

• PVDコーティング：耐摩耗性を高め、ガラス繊維入り樹脂に対応。
• フッ素樹脂コーティング：離型性を強化し、成形不良を防止。
• 耐熱コーティング：高温工程における金型の変形・酸化を防ぐ。
• 鏡面仕上げ＋薄膜コーティング：光学部品や医療器具で必要な透明度・精密性を確保。