こちらの記事では、金属の「焼き付き」や「かじり」について、その発生メカニズムや対策を解説しています。また、対策方法のひとつとして「PVDコーティング」と呼ばれる方法についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
金属の「焼き付き」や「かじり」とは、金属同士が接触して滑り運動を行う際に表面が損傷する現象のことをいいます。「焼き付き」「かじりのそれぞれの定義は以下のとおりです。
金属同士が強く擦れ合った際に、摩擦により表面がむしり取られる、凸凹が生じたりする現象を「かじり」といいます。主に、ボルトを締め付ける際や低速・効果中の摺動部にて発生しやすい傾向があり、簡単にいうと表面が「荒れている状態」を指しています。かじりが一度発生すると急速に広がってしまいます。
焼き付きとは、前述の「かじり」がさらに進行して摩擦熱により接触面が局部的に溶融・凝着し、最終的に固着して動かなくなってしまう状況をいいます。いったん癒着してしまうと、引き剥がすのが難しくなります。 このように、かじりと焼き付きは密接に関係しており、初期段階の軽い損傷を「かじり」といい、固着してしまった状態を「焼き付き」と呼び分けています。

金属の焼き付きやかじりは、主に「油膜の破断」「凝着(ウェルディング)」という段階を経て発生します。
金属間には通常、潤滑油などが介在することによって直接の接触を防いでいます。しかし、荷重が大きすぎたり速度が速すぎたりすることによって摩擦熱が上昇した場合、潤滑油の粘度が低下する・油膜が切れるといった状況が発生します。
油膜が切れてしまった場合、金属の新生面(酸化被膜がない面)同士が直接接触します。金属の表面には、微細な突起がありますが、ここに荷重が集中します。そうすると瞬間的に高温・高圧状態となり、突起同士が溶接されたような状態になります。この状態を「凝着」と呼んでいます。
運動が継続した場合には、この凝着した部分が引きちぎられてしまうことによって金属の破片(摩耗粉)が発生します。これがさらに摩擦熱と損傷を増大させることとなり、最終的に面全体が溶着する焼き付きと呼ばれる状態に至ります。
現場にてよく用いられている対策には、主に「潤滑」「材料の固定」「表面加工」の3つがあります。
対策のひとつ目として挙げられるのが「潤滑剤の強化」です。高性能な潤滑剤を用いることによって油膜保持力高めていきます。ただし、高温やクリーンルーム内といったように、油の使用が制限される環境では使用できないことや、定期的なメンテナンスが欠かせません。
硬度が異なる金属や、化学的親和性が低い材料同士を組み合わせる方法もあります。ただ、強度や耐食性といった観点から、どうしても同系の材質を使用せざるを得ないケースが多いといった点が課題として挙げられます。
表面をあえて荒くすることによって油だまりを作る、逆に極限までなめらかにするといった方法での対応も考えられます。ただし、摩耗が進むことによって表面の状態が変化するため、長時間の効果持続が困難といった面があります。

PVDコーティングは、「physical vapor deposition」の略称。金属の表面に対して極めて硬く、摩擦係数の低い薄膜を形成し、焼き付きを物理的・科学的に遮断するものです。具体的には下記の通りです。
PVDコーティングは、合金(Ti、Cr、Al、Siなど)を蒸着させる技術です。この技術で非常に硬い膜を形成して、金属の突起同士が直接触れ合うことを防ぎます。そのため油膜が切れてしまった場合でも、金属が溶着することを物理的に阻止できます。
PVDの膜は、金属ではなくセラミックスに近い性質を持っていることから、相手材の金属と化学的に凝着しにくくなります。
PVDコーティングでは数ミクロン単位の薄膜を生成するため、部品の寸法精度を損なうことがなく、さらに焼き付きの対策といった付加価値を与えられます。この方法によって、従来は難しかった高負荷・高速環境における連続運転が可能となります。
こちらの記事では、「かじり」や「焼き付き」とは何か、またその対策について解説してきました。「かじり」は金属の表面同士が強く擦れ合うことによって、表面がむしり取られる、凸凹が生じるといった状態ですが、それが摩擦熱などによって溶融・凝着してしまった状態が「焼き付き」と呼ばれます。
潤滑剤や材料の選定による対策が従来行われてきたものの、環境やメンテナンスの面で限界がありました。しかしPVDコーティングの場合、凝着そのものを防ぐ解決策であるといえます。
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