本記事では、PVDコーティングの概要とメリット・デメリットを解説しています。デメリットをカバーして金型の寿命を延ばすための方法についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
PVD(Physical Vapor Deposition)コーティングとは、「物理蒸着法」とも呼ばれており、Ti、Cr、Al、Siなどの合金を蒸着させる技術です。金型の表面をコーティングによりツルツルさせることで摩耗性を向上させるために、電気的(物理的)に硬質膜を真空蒸着させる処理です。
PVDコーティングの代表的な手法には、ガラスやプラスチックなどに用いられる「真空蒸着法」、機械やプラスチック、工学分野など広い範囲で用いられている「スパッタリング法」、そして非常に幅広い分野で用いられている「イオンプレーティング法」の3種類があります。
CVD(Chemical Vapor Deposition)コーティングは、熱的(科学的)に硬質皮膜を処理物表面に蒸着させる処理であり、「化学蒸着法」とも呼ばれています。化学反応を用いて成膜する点や、高温(通常800℃~1000℃)で被膜させる方法が一般的であるといった点などがPVDコーティングとの大きな違いといえます(ただし、最近では比較的低温で成膜できる技術も開発されています)。
PVDコーティングは、耐摩耗性が必要となる金型に適している技術であるといえます。例えば、プレス金型や成形金型の場合、摩擦や摩耗が激しい工程を経るため、あらかじめ金型に対してコーティングを行って硬度を高めることで、摩耗に強い金型にできます。
また、電子部品など高い精度が求められる必要な金型についても、PVDコーティングが向いているといえます。非常に薄い皮膜で金型を保護し、表面性能の向上も期待できます。
そのほか、PVDコーティングを行った場合には耐熱性も向上することから、高温環境で使用される金型にも向いているといえます。例として、ダイカスト金型や熱間鍛造金型などが挙げられます。耐酸化温度が高い皮膜を選択することによって熱による劣化を抑えられます。
PVDコーティングを行う際には、450度程度の低温での加工を行っていきます。そのため、コーティング処理を行いたい金属がコーティングの際の熱によって変形するリスクを抑えることができます。
金型に対してPVDコーティングを行った場合、金型の表面に硬質な薄膜が形成されます。この点から、耐摩耗性が大幅に向上するといったメリットが得られます。耐摩耗性の向上によって金型の寿命を延ばすことができ、結果的に製品の品質を安定させることにもつながっていきます。製品品質が安定すると不良品の発生率低下も期待できるため、製造現場全体の生産性向上にもつながる要素といえます。
高温・高荷重の状況においては、潤滑油膜の切れにより金型と材料が直接接触してしまい、焼付きや溶着が発生します。このような状態を防ぐためにPDVコーティングを行い、離型性を改善することによって、安定した成形に繋げていきます。
PVDコーティングは、真空中で蒸発させた粒子を直線的に飛ばして成膜を行います。このプロセスにより、金型の深い穴の内径や狭い溝の奥など、複雑な形状の部分には粒子が届きにくく、つきまわりの悪さが問題になってくることがあります。そのため、均一な品質が求められる精密金型においては、複雑な形状への対策が必要であるといえます。
化学反応を利用するCVDコーティングと比較すると、PVDコーティングの場合には機材との結合力は物理的な衝突エネルギーに依存するため、密着性が劣りやすい傾向があります。特に、金型の母材硬度が低いケースにおいては、高硬度の皮膜を支えることができず、剥がれ落ちてしまう現象が発生します。また、事前に洗浄を十分に行っていない場合なども、コーティングが剥離してしまう原因になる可能性があります。
PDVコーティングの装置によっては、成膜中に微細な金属粒子が表面につく「ドロップレット」と呼ばれる症状が発生するケースがあります。この状態になると、凸状のゴミのような突起ができてしまうために金型表面の滑らかさが損なわれてしまい、成形品のカジリの原因になる可能性も考えられます。
また超鏡面が求められるプラスチック金型などにおいては、成膜後の研磨加工を行うことが必要になるケースもあります。
コーティングを行う前にしっかりと処理を行い、密着性を高める方法があります。この場合、金型の表面に対して窒化処理を施して硬化層を作る処理を行い、被膜にかかる荷重を分散させて剥離を防ぎます。また、成膜直前にイオンによる表面清掃を行い、表面の酸化膜や不純物を除去することによって、被膜の密着性を向上させられます。
つきまわり性の悪さを改善するため、金型を装置内で多軸回転させる治具を使用することで、均一な成膜を得られます。また、「HiPIMS(高電力パルスマグネトロンスパッタリング)技術」と呼ばれる技術を用いてイオン化率を高め、電解制御を行うことで複雑形状の側面や奥の部分にも粒子を回り込ませることが可能となりますので、膜厚の均一性を向上させられます。
こちらの記事では、PVDコーティングについて解説を行ってきました。さまざまな分野で用いられているPVDコーティングには、耐摩耗性の向上や離型性の向上などのメリットが期待できます。ただし、複雑な形状へのつきまわり性が悪い、 密着性に課題が出てくるケースがあるといったデメリットも見られます。そのため、適切な前処理や装置の選定を行うことによってデメリットをカバーが可能となります。
金型の寿命を延ばすことで生産性向上にもつながる金型コーティング。しかし、金型の種類によって耐摩耗性や耐熱性、樹脂残留など解決したい課題はさまざま。 ここでは、金型の種類別に課題を解決できるおすすめコーティングメーカーを紹介します